FP&Aの重要性：予算精度を高め企業成果を最大化するポイントを解説
企業経営のグローバル化や経済環境の変動が激しくなってきた昨今、企業が持続的な成長を実現するためには、財務分析と戦略的な視点を組み合わせた意思決定サポートが欠かせないと言われます。特に海外の企業では、こうした役割を担うFP&A（Financial Planning & Analysis：ファイナンシャルプランニング＆アナリシス）の存在が注目されています。 日本国内でも、予算管理や財務分析は従来から行われてきた業務です。しかし、ビジネス環境変化のスピードが増す中、従来のやり方だけでは迅速かつ柔軟に対応することが難しくなりつつあると感じる企業は少なくないようです。そこで、経営計画の策定から予実管理、レポーティングや業績分析までを一元的に担い、経営層の意思決定を支えるFP&Aの体制構築が急務とされる局面が増えているように見受けられます。 本記事では、まずFP&Aとは何かを改めて整理し、その重要性と役割、さらに求められる資質やスキルについて述べます。そのうえで海外の最新動向を簡単に紹介し、最後にFP&A業務を円滑に推進するSactonaの機能に触れてみたいと思います。
１ FP&Aとは何か？
FP&Aの基本概念
FP&Aとは、日本語で「ファイナンシャルプランニング＆アナリシス」と呼ばれる業務領域を指します。企業の財務・経営計画に携わる人材が、社内外のさまざまな情報を用いて経営戦略に沿った予算や見通しを立案し、実際の進捗状況を分析することで、経営陣の意思決定をサポートするのが主な役割とされています。
海外では、このFP&Aという職能は一般的にファイナンス部門の中で確立されており、プロアクティブに経営に関与していく立場として認識されていることが多いようです。日本では従来、財務経理部門の業務といえば主に決算処理や会計報告、資金管理が中心と捉えられてきましたが、最近ではFP&Aの必要性が注目されてきていることもあり、より戦略的な視点を持つファイナンス人材の育成が急務になってきていると言われています。
FP&Aと経営管理の関係性
FP&Aと経営管理は深い関係にあります。経営管理の範囲は、事業計画の策定、実行、モニタリング、そして改善アクションの実施といった一連のプロセスを含みます。FP&Aはそのうち、財務データを活用した予算編成や業績モニタリング、財務指標を用いた分析といった役割に特化した専門領域です。
そのため、経営管理部門とFP&Aの部署が別々に設けられる場合もあれば、経営企画部門にFP&Aが統合される場合、あるいは財務経理部門の中でFP&Aチームが編成される場合など、さまざまな組織構造があります。企業によってはFP&Aが「ブリッジ」のように機能し、経営企画や事業部門、さらには財務・経理の各部門との調整役になることもあります。こうした役割を意識しながら、どのような組織の中でFP&Aを位置づけるかが重要です。
FP&Aと従来の財務部門との違い
FP&Aと従来型の財務経理部門の違いは、役割の広さと戦略志向の度合いとされています。従来型の経理部門が決算報告などの「過去」を取り扱う業務が多いのに対し、FP&Aは企業の「未来」を見据えます。具体的には、戦略策定や予算編成のサポート、シミュレーションやモデリングを通じた将来予測などに重点が置かれます。
海外では「FP&Aチームが経営に対して直接アドバイスを行う」「事業部門と協力してシナリオプランニングを実施する」などの事例が多く見受けられます。このようにFP&Aは経営トップに対する助言者として、より戦略的かつ実践的な役割を持つ点に大きな特徴があるようです。
日本企業におけるFP&A組織の現状
日本ではFP&A機能が経営企画部門や財務経理部門で行われる等、企業によって様々ですが、その重要性が益々認識されてきて、組織・人員増強が図られています。近年は、コーポレートガバナンス改革やCFOの役割拡大に伴って、海外で一般的な「CFO直轄のFP&A専門チーム」を設置する動きが徐々に日本企業にも広がっています。特にグローバル展開している大手企業やPEファンド傘下、新興上場企業などでは、FP&Aを財務経理部門に組み込み、予算編成や業績分析、事業投資評価を一元的に担う体制に移行する例が増えてきました。
ただし、まだ設置率自体は高くなく、多くの企業では経営企画部門がFP&A的な役割を兼務し、財務経理部門は一部の計数分析にとどまる形態が一般的であると言えるでしょう。これらを踏まえてFP&A組織形態を大きく分けると以下の3つに分類されております。
- 経営企画部門主導：従来型の企業では、FP&Aに相当する業務を経営企画部が中心となって行い、財務経理部門は決算数値の集計などにとどまるケースが多い
- 財務経理部門（CFO組織）主導：先進的な企業の一部では、FP&Aを財務経理部門内に置いて数字管理と経営管理を一体化しているが、まだ少数派
- CFO直轄：海外ではFP&AをCFO直下に置くのが一般的だが、日本企業では今のところ限定的。ただし、大企業や投資家からの要求が高い企業を中心に増加傾向
２ FP&Aに求められる役割と重要性
経営計画策定への貢献
FP&Aが担う重要な役割のひとつが、経営計画の策定支援です。経営計画には中長期の視点が欠かせませんが、市場環境や競合動向、さらには自社の強み・弱みといった要素を踏まえ、数値的なシナリオを組み立てていく必要があります。特に、海外市場への進出や海外子会社を持つ企業では、各国の経済指標、為替リスク、法規制の違いなどが考慮材料となり、複雑さが増す場合が多いようです。
FP&Aの専門家は、こうした外部要因と内部要因を合わせて考慮し、財務面での試算を積み重ねることで、経営トップが判断しやすいようにシミュレーションを提示する役割を担います。単なる定量分析だけでなく、事業部門からの定性情報を聞き取り、仮説を立てながら複数パターンの将来像を描いていくことがFP&Aの価値と考えられています。
予算管理・予測業務におけるFP&Aの位置づけ
経営計画が策定された後は、部門ごとに予算を割り当て、その執行状況を管理・分析することが必要になります。この段階で、FP&Aの役割は「作って終わり」ではなく、日常的に予算実績をトラッキングし、ズレが生じた場合に早期に察知すること、そして必要に応じて修正予算の提案を行うことです。
予算管理のプロセスは往々にして事業部門や関連部門とのコミュニケーションが複雑になりがちです。FP&A担当者が中心に立つことで、各部門の視点を踏まえたうえでの調整を行い、全社最適を意識した予算管理を推進しやすくなると期待されています。こうした機能がしっかりと果たされると、企業としてのリソース配分が合理的になり、無駄や機会損失を減らせる可能性が高まると言われます。
戦略的意思決定支援の要としてのFP&A
FP&A担当者は、財務分析の視点を軸にしながら、ビジネス全体を俯瞰する役割を担います。例えば、投資案件の評価や新製品・新サービスの事業性分析、M&Aの検討などに際して、複数の定量分析やシナリオ比較を行うのが典型的です。さらに、海外展開におけるリスクヘッジ策や為替影響の見積もりなどにも関与する場合もあります。
このように、FP&Aは戦略的意思決定の要であり、経営トップからの要望に対し迅速かつ正確な分析を提供することが期待されます。加えて、単に数字を作るだけでなく、その背景にある事業上の課題や市場の変化を的確に読み取り、対策案を提案していくことも重要とされています。
３ FP&Aに必要な資質とスキル
ファイナンス知識と分析能力
FP&Aに携わる以上、財務諸表の読み方や管理会計の考え方、キャッシュフロー分析など、ファイナンスに関わる幅広い知識が求められると言われます。海外のFP&A職の求人では、MBAや公認会計士（CPA）の資格などが必須とされるケースもあるように見受けられますが、必ずしも資格だけがすべてではないとも言われています。
重要なのは、「会社の数字を見て、何が起きているのかを正しく分析し、経営にとって意味のあるインサイトを得られるかどうか」です。そのためには、データ分析スキルや多次元分析への知識、Excelをはじめとする分析ツールの活用スキルが必須とされています。
コミュニケーション力とステークホルダー調整
FP&Aが扱う情報は、経営トップ、事業部門、コーポレート部門など、多くのステークホルダーにとって重要な意味を持ちます。分析結果を提示するだけでは不十分で、関係者が理解しやすい形にまとめることや、相手のニーズに合わせてタイムリーに情報を提供する姿勢も求められます。
また、予算管理では事業部門や上層部など、しばしば立場の違う人々の間を取り持つ必要が出てきます。そのため、調整能力や交渉力も高いレベルで必要となります。FP&A職の紹介記事やインタビューなどでも、コミュニケーションスキルの重要性が繰り返し強調されていることからも、FP&A業務における対人スキルの重要度をうかがい知ることができます。
ITリテラシーとデータの可視化スキル
近年、FP&A業務は大量のデータを扱うことが増えています。会計データだけでなく、営業実績や顧客行動データ、場合によっては経済指標やSNSの反応といった非定型データが活用される場面も考えられます。そうした膨大な情報を処理し、わかりやすく可視化するためのITリテラシーと、それをサポートするITソリューションが必須になりつつあります。
特に、分析結果を経営陣や他部署と共有する際には、見える化されたダッシュボードやレポートがあると、理解度が飛躍的に高まります。グローバルで言えば、クラウドベースのシステムを活用して、海外拠点とも一元管理された情報を共有する企業が増えています。こうしたシステム導入における要件定義やベンダーとの折衝などにもFP&Aが関わるケースは多いと考えられます。
４ 海外におけるFP&Aの最新動向
デジタルトランスフォーメーションとFP&A
海外では、デジタルトランスフォーメーション（DX）の進展に伴ってFP&Aの業務フローにも大きな変化が起きているようです。企業が持つ膨大なデータをリアルタイムに収集・分析し、経営に必要なインサイトを素早く得るために、BIツールだけでなく経営管理専用ソリューションを活用しているケースが増えています。
FP&A担当者は、従来の「レポート作成」や「予実管理」の枠を越えて、こうしたデジタルツールの導入や運用設計にも深く関わるようになってきています。加えて、デジタル技術を使いこなすことで、ヒューマンエラーや手作業の負担を軽減し、より付加価値の高い分析へリソースを割けるようになることが期待されています。
グローバル企業のFP&A組織構造
海外では、グローバルに拠点を持つ大企業において、FP&Aチームを地域別・事業別に配置し、それぞれがローカル情報を集約して本社に報告する仕組みが一般的になっています。各地域の経済状況や消費者の嗜好に合わせて細かな調整が必要となるため、現地のFP&A担当者が日々モニタリングを行い、本社に共有するという流れです。
また、一部の大企業では「センター・オブ・エクセレンス（CoE）」と呼ばれる専門チームを設置し、FP&Aの中でも難易度の高い分析や高度なツールの導入検討を行うケースもあります。こうした仕組みは、複数の国や地域で事業を展開する際の情報ギャップを最小化し、効率的に経営情報を集約するために有効と考えられます。
シナリオプランニングの活用事例
海外のFP&Aでは、シナリオプランニングの活用事例が多く見受けられます。ビジネス環境の先行きが不透明な時代において、「ベストケース」「ベースケース」「ワーストケース」のような複数シナリオを想定し、それぞれに対応する戦略や予算配分を検討する流れです。
例えば、消費者ニーズや競合環境が急に変化した場合でも、ある程度想定したシナリオに基づくアクションプランを事前に立案しておくことで、企業全体としての反応速度を上げることができると考えられます。FP&Aがシナリオプランニングに関与することで、財務インパクトを定量的に示しつつ、経営層や事業部門との共通理解を深めることが期待されます。
５ FP&A業務推進へのアプローチとSactona活用
FP&Aプロセスのシステム化・定着化
ここまで述べてきたとおり、FP&Aが果たすべき役割は多岐にわたります。とりわけ、予実管理や財務分析、シナリオプランニングなどの業務はデータドリブンなアプローチが求められるため、ツールやシステムの導入は不可避と考えられることが多いです。
日本企業において、FP&A機能を強化する取り組みのなかで、システム化や定着化が大きな課題になっています。現場ではExcelを中心とした手作業が主流だったり、部門間でデータが連携していなかったりすると、分析に膨大な時間がかかり、付加価値の高い提案や戦略検討に十分な時間を割けないこともあると聞きます。
そこで、FP&A担当者が情報分析と提案活動に集中しやすい土台を整えるために、システムによる一元管理や多次元データ分析、レポート作成の自動化などの仕組み作りが必要になってきます。
Sactonaの主な機能
そうしたFP&A業務をシステム面でサポートするソリューションとして、経営管理専用プラットフォームSactonaがあります。Sactonaは、予算管理・業績管理を効率化し、企業の経営管理を継続的に改善することを目的として開発されたシステムです。
- 多次元データ分析機能
部門別や製品別、地域別など、多様な切り口で実績データを分析できる機能が標準装備されています。FP&Aでは、事業や製品別に収益性を見極めることが重要なので、こうした多次元でのデータ分析が必要不可欠です。 - レポート作成・ダッシュボード機能
さまざまな角度から可視化されたレポートやダッシュボードを作成できます。経営陣や現場への情報共有をスムーズに行いやすくなることから、FP&A業務のスピードアップに貢献できます。 - 予算管理・見込管理機能
事業ごとの予算管理や、定期的な見通し（フォーキャスト）の作成・更新をシステム上で行えます。現場が日頃使い慣れているExcelをそのままユーザーインターフェースとしているため、新たなシステム教育の負荷が少なく、迅速に活用できます。 - ワークフローによる承認プロセス
予算案や修正予算などの承認を管理しやすいワークフロー機能もあります。メールや口頭でのやり取りよりも体系立てて管理できるため、予算管理のプロセスを可視化できるようになります。
FP&Aを加速させるSactona活用の可能性
実際にSactonaのようなプラットフォームを活用することで、FP&Aの作業効率を高め、経営へのインパクトを生み出しやすい体制を整えることができます。特に、日本企業では部門間のデータ共有やワークフロー管理、それらに伴うシステムの定着性が課題になりがちなので、Sactonaのような仕組みを導入し、定常的な業務フローを標準化・効率化することで、FP&A担当者がより本質的な課題解決に向き合える時間を確保できるようになります。
また、予実管理やフォーキャスト更新といったルーティン業務をシステム化することで、シナリオ分析やKPIモニタリングなどの高度な業務にも手を広げやすくなります。その結果として、FP&Aチームの役割が「単なる管理業務」から「価値創造に直結する戦略パートナー」へと進化します。
もちろん、システムはあくまでツールであり、それを使いこなすFP&A担当者のスキルや、経営トップと事業部門の協力体制がそろってこそ真価を発揮します。今後、海外で進んでいるデジタル化やシナリオプランニングの手法を参考にしながら、Sactonaのような経営管理に専門特化したソリューションを取り入れていくことが、FP&A機能を強化する上での有効手段の一つであると言えるでしょう。
まとめ：FP&A業務推進を支援するSactona
本記事では、FP&A（Financial Planning & Analysis）とは何か、その基本的な考え方や重要性、さらに求められる資質やスキルの概要を紹介しました。海外事例を踏まえると、FP&Aは単なる予算管理やレポート作成にとどまらず、戦略的意思決定をサポートするうえで非常に重要な役割を担っていることがわかります。そして、FP&Aの役割を効果的に果たすためには、システムやツールを活用して作業効率や分析の精度を高めることが重要になります。
Sactonaは、予算管理、レポーティング、ワークフロー管理、多次元データ分析など、FP&Aが必要とする主要な機能を一つのプラットフォームで利用できる仕組みが用意されています。こうした経営管理専門のソリューションを導入することで、FP&Aの作業負担を軽減し、より戦略的な業務に時間を割くことができます。海外で進んでいるFP&Aのデジタル化やシナリオプランニングの取り組みを参考にしつつ、国内でも自社の業務環境に合わせた形で導入を検討してみることが、FP&Aの役割強化につながることでしょう。
