日本CFO協会で「低コストかつ短期間で実現する予算編成・収益見込管理」として講演しました。

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当社代表の吉田が日本CFO協会で「低コストかつ短期間で実現する予算編成・収益見込管理」として講演しました。

講演資料は、下のリンクをご参照ください。
配布資料
講演内容スクリプト

以下、講演内容スクリプトの再掲です。

低コストかつ短期間で実現する予算編成・収益見込管理

時価主義の浸透を背景に、企業経営上における将来予測の重要性が増している。しかし、経済環境が厳しい中ではシステム投資を圧縮せざるを得ず、人員増強もままならないのが現状である。今回は、いかに効率よく予算編成や収益見込管理などの「経営管理」を高度化するかについて解説し、SaaS式の最先端経営管理ツールを紹介する。

●「経営管理」の基本的な考え方

本題に入る前に、「経営管理」というキーワードについて考察したい。まず前提として、企業は投資家をはじめとする利害関係者に対して期待に応え、コミットしていかなければならない。そして、コミットしていくためには、企業グループ全体を方向付けしていかなければならない。その意味で、経営管理とは「企業グループ全体を方向づける仕組み」と言えよう。計数管理という意味での経営管理を考える場合、大きく3つの観点がある。1つは、どういうふうに回していくかという「サイクル」。もう1つは、経営管理をする上で何を見るかという「基準」。そして、企業全体を1本で見るのか、あるいは細かく分けて見ていくのかという「単位」である。
まず「サイクル」について見てみよう。経営管理の基本は、いわゆる「PDCAサイクル」による管理である。はじめに、3カ年計画などの中期経営計画を立てる。次に、単年度の事業計画・予算の編成を行う。そして、計画に対する実績進捗管理(予実対比)、月次の速報管理や年度末に向けた見込管理を行い、計画達成に向けたアクションをとる。最後に、業績評価や施策へのフィードバックなどにつなげていく――こうしたサイクルが上場企業では一般的である。そして、「現在の経済環境における最適なPDCAサイクルの構築」が重要な経営課題となっている。
次に「基準」についてである。企業が経営管理において採用してきた基準や尺度は、時代と共に変化してきた。例えば、1980年代以前は、P/Lを中心に「売上」「利益」などの「稼いだ金額」を把握する考え方が中心であった。しかし、1990年代に入ると、「利益率」「ROA」「ROE」といった、B/Sを意識して効率性を重視する考え方も出てくる。1990年代後半からは、「EVA」「ROIC」「DEレシオ」など、C/Fによる現在価値の増減や効率を把握する考え方が登場する。そして、2000年代以降には、リスクの程度や社会的存在も考慮されるようになった。このように、さまざまな指標・尺度・基準がある中で、「現在の経済環境において採用すべき経営管理基準とはどのようなものであるか」ということも、やはり企業の重要なテーマの一つとなっている。

●時価主義の拡大

予算編成や収益見込管理が重要性を帯びている背景には、ここ10年間の「時価主義」の拡大がある。例えば、株式などの有価証券や、設備などの有形固定資産・特許などの無形固定資産はもちろん、子会社取得時の「のれん」、製品などの棚卸資産など、資産項目の大部分が時価評価・減損適用・低価法の対象となっている。
時価評価のアプローチは、①インカム・アプローチ、②マーケット・アプローチ、③コスト・アプローチの3つに分類される。①は、将来生み出されるキャッシュフローをベースに価値を評価する方法で、評価方式の例としてはDCF法が挙げられる。②は、市場における評価をもとに価値を評価する方法で、評価方式の例としては評価倍率法がある。③は、再調達コストから価値を評価する方法で、評価方式の例としては時価純資産法がある。
3つの時価評価のアプローチの違いは、ニワトリで説明すると分かりやすい。ニワトリ1匹が幾らか考えるときに、「ニワトリを育てるのにどれくらいのエサ代や手間がかかったか」で考えるのが③、「品種、重さや大きさなど、同じようなニワトリの市場価格」を参考に考えるのが②である。
これに対し、①のインカム・アプローチは「ニワトリが死ぬまでに毎日1個ずつ卵を産むとして、仮に卵を全部売った場合に幾らになるか」と考える。継続的、永続的に事業があり、将来キャッシュフローが出てくるような事業体であれば、インカム・アプローチに基づくDCF法が最も基本的な考え方として採用される。

●時価評価の基本的な考え方(DCF法)

DCF法は、将来の期間において、評価対象が生み出すフリーキャッシュフローを、評価対象やその対象企業の属する業界における事業リスクを考慮した上で算定される一定の割引率(評価対象に対する市場の期待収益率)で現在価値に割り引いて評価する方法である。割引率としては、一般的に加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)を使用する。(パネル-P8)
次のパネルは、ごく簡単なDCF法モデルをもとに、成長率と割引率を変化させると現在価値がどう変化するかをシミュレーションしたものである。(パネル-P9)
永続成長率を1.0%と仮定すると、現在価値の合算額は2,254円となる。しかし永続成長率をマイナス3.0%とすると、2,254円は1,530円に目減りする。あるいは割引率が変わってもその金額は大きく変わってくる。つまり、将来見込のちょっとしたさじ加減が、現在価値を大きく左右するのである。

●時価会計の経営管理への影響

近年では、こうした時価主義の企業会計により、いったん将来見込が当初期待より下回る状況になると、単年度損益に大きく影響を与える傾向が強まっている。
例えば、次のパネルの左下図のように、レバレッジを効かせ自己資本がかなり薄い場合には、減損によりあっという間に自己資本を棄損してしまうことになる。(パネル-P10)
しかも、時価の振り幅は極端であるため、減損により当期の損益、営業利益が全部吹き飛んでしまうといったことも珍しくない。現在のように経済環境が激変する状況においては、常に将来動向の兆候を把握し、損益およびバランスシートへの影響を適切に把握することが、企業の経営管理上、非常に重要になってきているのである。

●日経225社の業績予想の精度は?

それでは、実際のところ、日本企業は業績をどの程度正確に予測できているのか。弊社では、日経225社を対象に平成21年度~19年度における業績予想の精度について調査した。(パネル-P12~18)本調査では、決算情報をもとに業績予想と実績を比較し、利益項目において、業績予想修正の開示が義務づけられている「乖離率30%」を予想の当たりはずれの目安とした。例えば21年度の年初予想について見てみると、半分以上の企業で予想利益と実績が30%以上乖離している。つまり、半数以上の企業の予想が「はずれている」と言える。(パネル-P13)同様の傾向は、21年度の中間予想でも示されている。(パネル-P14)では、業種別で乖離率の差はあるのか。本調査では、特に製造業と建設業の乖離が大きい結果となった。傾向としては、内需中心の業界の振れ幅はそれほど大きくはないが、海外依存度の大きな業界は振れ幅が大きいと言える。(パネル-P15)年度ごとに見てみると、20年度で特に乖離が大きい。これはリーマン・ショックの影響と考えられる。当期純利益で見ると、8割以上の企業が予想をはずしている。(パネル-P16)次のパネルは、年度別の乖離率の分布図である。(パネル-P17)やはり、20年度はほとんどがマイナス30%以上である。ちなみに、21年度ではマイナス30%以上の会社もあれば、プラス30%以上の会社もあったことが分かる。つまり、保守的にやり過ぎた企業がかなりの割合であったということが想像される。要は、良くも悪くも読み誤ってしまった企業が多かったということであろう。なお、次のパネルは企業規模別に見たものである。(パネル-P18)企業の大小を問わず、予測精度は高くないと言えそうである。

●「先を見通す経営」のために何が必要なのか

このように、本調査では業績予想の難しさが改めて浮き彫りになった。しかし、難しいからこそ、企業にとって、先を見通す経営管理が重要であることは言うまでもない。では、先を見通す経営管理のために何が必要なのか。具体的に見ていこう(パネル-P20)。
常に先を見通す経営管理が求められる中で、年に一度の事業計画や予算では、計数はあっという間に陳腐化してしまう。これでは先を見通した経営ができないのは明らかである。また、事業のアウトプットである財務計数だけでは、先を見通す材料としては不十分である。製品別販売数量・在庫数量・単価・受注残・生産数量などのプロセス関連の計数や、金利・為替・原材料単価などの環境計数の最新の動向である速報値や見通しを、財務計数と連動する形で管理する必要がある。

●経営管理の実務とシステムの現状

次のパネルは、決算業務と経営管理を比較したものである。(パネル-P21)
両者はさまざまな点で大きく異なる。例えば、取扱情報の範囲は、決算に比べ経営管理の方が幅広い。財務情報について、実績の数字以外にも計画・予算・見込・速報といったさまざまなバリエーションの数字を見る。あるいは、数量・単価・人数・時間といった、財務情報ではない一歩手前の数字も見ていくことになる。管理単位についても、連結ベースのセグメントだけではなく、製造販売スルーの採算をグローバル全体で商品別に見る必要がある。また、実務を支える部署も異なる場合がある。決算は経理部門が担当するが、経営管理については経営企画部門が担当するという企業も多い。
さらに、システムについても違いが見られる。決算作業においては、2000年代以降、連結決算パッケージの導入が進んだが、予算編成や見込管理という経営管理においては、主にマイクロソフトのエクセルがツールの主流となっている。これはリンクだらけ、関数だらけで、担当者しか触れない「おばけ」になっている場合も珍しくない。
別の角度から経営管理の現状を見てみよう。次のパネルは、経営管理の進捗状況を類型化して示したものである。(パネル-P22)右側に示したように、先を見通す経営管理のためには、管理単位の細分化や、管理頻度の増加など、さらなる業務の高度化・効率化が求められている。しかしながら、現状の経営管理実務を支えるシステムは、こうしたニーズに追いついてはいない。エクセルのおばけで何とかやっているのが実態である。

●なぜ経営管理システムの高度化・効率化が必要なのか

では、具体的に、現状の経営管理システムの何が問題なのか。次のパネルは、経営管理システムの全体像を示したものである。(パネル-P23)
関係会社や拠点には「現地基幹システム」があり、本社には「本社基幹システム」と「本社連結システム」がある。このような連結決算を含む基幹システムについては、多くの企業で整備が進んでいる。しかし、これらからは「過去の数字」しか取り出せない。経営者が本当に見たい「ちょっと先の数字」については、大量に入り乱れているエクセルシートに入っているのである。
エクセルシートのままでは、効率的に数字を取り出すことには限界がある。中期計画・予算編成・月次実績管理・見込管理をやりたい。あるいは、製造販売スルーの製品別の管理をやりたい。あるいは、サービス・商材別・商圏別の管理をやりたい。さらに、連結事業別の時価事業価値も把握したい――こうしたニーズを満たすためには、やはり、全体を統合的に見ることができる「統合型経営管理システム」が必要になろう。(パネル-P24)

●SaaS形式の経営管理システム「Sactona」のメリット

そこで、統合型経営管理システムの一例として紹介したいのが、弊社が作成・開発・販売している経営管理システム「Sactona(サクトナ)」である。これは、インターネット・イントラネットで拠点間を結び、リアルタイムに経営データをやりとりするソフトで、Excelとの親和性も高く、操作性・柔軟性に優れている。
具体的に詳しく説明しよう。次のパネルは、Sactonaの全体図である。(パネル-P25)
中央にSactonaのサーバーがあり、これが事業所・工場、子会社、本社、あるいは他の基幹システムを結び、数字を取りまとめて経営陣にレポーティングする、あるいは現場に数字を戻す仕組みである。
Sactonaは、パッケージソフトウエアでの販売のほかに、SaaS(サース)形式でも提供している。弊社の顧客の多くは、後者の形式での利用を選択している。自前でサーバーを持ち、保守管理するのは、膨大なコストと手間がかかる。SaaSであれば、別途ハードウエアを購入する必要はなく、初期投資が尐なくて済む。また、年間契約であるため、余計な資産を抱えることもない。初期コストを抑え、状況の変化に対応しやすいことがSaaSの魅力と言える。

●Sactonaで適用できる業務

Sactonaは、計数、多次元、定性的な情報を取り扱う経営管理業務に適用可能である。(パネル-P26)中期経営計画や予算編成などの財務計画だけではなく、販売・生産・設備・人員等の個別計画にも対応できる仕組みとなっている。実績管理についても、オラクルや勘定奉行といった既存の仕組みからデータをインターフェースして予実対比することもできるし、もちろん単体管理や連結管理もできる。また、会社別は当然のことながら、商品別・市場別・地域別・顧客別といった多次元の管理軸をビジネスに合わせて定義して、集計・分析もできる。さらに、P/L、B/S、キャッシュフロー、EVA、合理化といった財務系の数字だけではなく、数量や単価といったものもプロセス指標として取りまとめていくことも可能である。

●他のソフトウエアやシステムと何が違うのか

Sactonaの特徴は、大きく4つある。(パネル-P27)
まず一つ目の特徴としては、先述した「アプリケーションサービス提供型を選択可能」ということが挙げられる。もちろん、コストについても大幅に抑えられる。
「リアルタイム」も大きな特徴の一つである。予算編成などの計画系、将来系の数字の特徴として、数字が動いて、なかなか固まらないということがある。こうした数字については、全体であれセグメントごとであれ、変わった都度見たいという要求がある。Sactonaでは、こうしたリアルタイム性も追究している。また、電子メールでフォームを配付したり、データを収集したりする手間も不要である。現地でファイルを開け、編集してチェックインすると、直ちにデータベースの数字に反映され、全体の連結数字が見られる。
3つ目の特徴としては、「操作が容易」ということが挙げられる。エクセルとインターネットエクスプローラーが使えれば利用可能となっている。加えて、ウェブサイトから、帳票や資料を簡単に参照することもできる。
さらに、「経営管理の統合」も特徴である。経営管理において、複数のアプリケーションにおいてマスターを共有可能である。中期計画、予算、実績進捗管理、業績評価、営業情報などの一元管理もできる。
バックオフィス系の仕組みに対しては、なかなか資金を回せないのが企業の現状ではあろう。しかし、経営管理の高度化、効率化という面で、Sactonaには投資に見合うだけの大きな効果がある。特に、海外展開をしている企業や、国内拠点が多い企業には好適である。また、ITコストの管理やプロジェクトごとの管理といった個別の管理に対しても、十分対応できる仕組みとなっている。導入を検討いただければ幸いである。

※本稿は2010年9月2日開催の第132回CFOセミナー「低コストかつ短期間で実現する予算編成・収益見込管理」の講演をもとに編集を行なったものです。